通信傍受法・組織犯罪対策法に関する声明

本日、政府は、法制審議会が昨年9月10日に答申した「『組織的な犯罪に対処するための刑事法』整備要綱骨子」に基づく「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案」、「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」及び「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案」の3法案を国会に提案した。


当連合会は、昨年5月2日、法制審議会刑事法部会での議論の素材とされていた「事務局参考試案」に対して、「『組織的な犯罪に対処するための刑事法』に関する意見書」を発表し、また、答申案が確定される以前の5月23日の当連合会定期総会において「事務局参考試案」に反対する決議を行い、さらに本年2月3日付の意見書をもって、詳細に上記整備要綱骨子の問題点を指摘してきたところである。


本日提案された各法案には、当連合会の意見書に照らすとき、時期尚早のものや、その新設の当否を含めて、なお論議をつくす必要がある問題点が極めて多く残されている。


とりわけ、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案」については、通信の秘密の不可侵、プライバシーの保護及び適正手続の保障など憲法上の刑事諸原則の要請を未だ満たしているとは認め難い上記整備要綱骨子の内容のまま提案されたことは極めて遺憾である。


当連合会は、今後、政府および国会が、当連合会が意見書で指摘している憲法上、刑事法制上の問題点や立法の当否を慎重かつ十分に審議し、国民の人権保障上、将来に禍根を残すことのないよう、対応されることを強く求めるとともに、これまでの当連合会の決議並びに意見書の趣旨を実現する活動を強力に展開することを表明するものである。


1998年(平成10年)3月13日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫