坂本堤弁護士没後10周年を迎えての会長メッセージ

メッセージ

オウム真理教の信者によって尊い命を奪われた坂本堤さん、都子さん、龍彦さんに日本弁護士連合会を代表して、謹んで哀悼の意を捧げます。坂本、大山ご両家のご遺族の方々の悲しみを拝察いたしますとき、誠に痛恨に堪えません。心よりご冥福をお祈りいたします。


坂本さん一家がオウム真理教信者の卑劣な行為によって、忽然とこの世を去られてから10年目を迎えました。あなた方の無念さを思うとき、今でも激しい憤りが、わたくしたちの体を貫きます。


坂本さんは、オウム真理教による被害者を救済しようと、オウム真理教と対峙されていました。坂本さんは弁護士として、法律を武器に、敢然と立ち上がったのであり、それは、まさに弁護士法第一条にいう「基本的人権の擁護」「社会正義の実現」にかなった行動であり、まさに弁護士の本分ともいうべき行為でありました。


坂本弁護士事件は、このような弁護士活動に対する卑劣な業務妨害であり、民主主義、法治国家に対する野蛮な挑戦でありました。日本弁護士連合会は、弁護士がいかなる暴力、妨害にも屈することなく、人権侵害に対し果敢に立ち向かい、国民の基本的人権の擁護と社会正義の実現のために活動ができるよう、そして二度とこのような事件が起こらないよう、弁護士業務妨害対策委員会を設置して坂本事件の教訓を生かす活動に取り組みました。


また、日本弁護士連合会は、昨年9月、新潟県、富山県、長野県、横浜の各弁護士会並びに坂本弁護士と家族を救う全国弁護士の会と共同で「二度とゆるすまじ坂本弁護士事件」の決意を広く国民に伝えるために坂本弁護士一家メモリアル碑を、ご御家族3名の遺体が発見されたそれぞれの地に建立しました。


10年目を迎えた今日、わたしたちは、弁護士活動に対する妨害は人権と民主主義への挑戦であることを確認するとともに、坂本弁護士がその使命を命がけで遂行し、その志半ばで倒れたことを永く忘れることなく、その遺志を引き継いでいく決意を新たにしているところであります。


坂本堤さん、都子さん、龍彦さん、どうぞ安らかにお眠りください。


1998年(平成10年)11月3日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹