平成10年度司法試験最終合格者発表に関する会長声明

本日、平成10年度司法試験の最終合格者が発表された。812名の新しい法曹の後継者の誕生を心から歓迎し、今後の修習において法律実務家として順調に成長されることを期待する。


さて、平成8年度司法試験において短期受験者を優遇するいわゆる丙案が実施されてから今年で3年目を迎えた。その結果、9月30日に発表された論文式試験結果について、司法試験管理委員会によると、全合格者に占める受験期間3年以内の合格者の割合は50.1%、5年以内の合格者の割合は69.3%となっている。


ところで、同試験の成績に基づき、丙案を実施せずに成績順に合否を判定したと仮定してみると、受験期間3年以内の合格者の割合は 32.2%、5年以内の合格者の割合は58.4%となり、この数値は、平成2年10月の法曹三者の基本合意における検証基準の数値(3年以内=30%、または5年以内= 60%)を上回るものである。


一方、上記論文式試験においては、丙案により、成績順位が1300番台後半の受験生が合格する一方、600番台前半の受験生が不合格になっており、丙案のもつ不平等性は年を追うごとに一層拡大してきている。


当連合会は、三者協議会において、丙案のもつ不平等性、長期受験者の滞留現象の改善、合格者の1000名程度への増加などを指摘し、遅くとも平成12年度をもって丙案を廃止すべきであるとの意見を述べ、この提言を受けて、法曹三者で丙案の存廃問題等を協議する場を設置することが昨年10月合意された。同合意に基づき、本年10月15日から法曹三者によって遅くとも平成12年末までに結論を出すことを前提に検討が開始された。


当連合会は、この検討を通じて丙案の廃止を強く求めていくとともに、引き続き、あらゆる機会を通じて、丙案の早期廃止のために努力を尽くす所存である。


1998年(平成10年)10月30日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹