名張毒ぶどう酒事件第6次再審請求棄却に関する会長談話

去る10月8日、名古屋高等裁判所は、名張毒ぶどう酒第6次再審請求事件につき再審請求を棄却する決定を下した。


本件は、昭和36年に発生し、ぶどう酒に農薬を混入させて十数名を殺傷したという事件であるが、物証としては酒瓶の王冠に存する傷痕が唯一のものであって、第1審で無罪となり、第2審で逆転死刑の判決が下されるという、異例の経過をたどってきた。


本請求審においては、請求人が開栓したとされている、ぶどう酒瓶等につき新たに科学的検討を加える目的で、弁護団が去る8月31日に実験のための証拠物閲覧申請をしたところ、裁判所はこれに応答することなく上記決定を下した。


本件は、前記のごとき経過をたどった死刑確定事件であって、慎重な審理が求められる事件である。裁判所が、弁護団からの証拠物の閲覧請求に応じることなく棄却決定を下したことは、上記証拠物の実験によって再審事由の存在を証明する可能性を閉ざすもので遺憾といわなければならない。


本件の請求棄却決定によって請求人奥西勝氏は直ちに生命を断たれる危険にさらされる。奥西氏は事件発生以来、一貫して無実を叫び続けており、当連合会は、1973(昭和48)年以降、その再審の要求を支援してきたが、今後も再審開始を目指して支援を続ける所存である。


1998年(平成10年)10月12日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹