毒物混入カレー事件の取材・報道等に関する会長談話

当連合会は、1987年の第30回人権擁護大会において、「報道に関し、公共性・公益性との関連の程度に応じて、報道される側の名誉・プライバシー等を十分に配慮し、行き過ぎた取材および報道をしないこと」等を求める宣言を採択し、その後の「松本サリン事件」や「神戸小学生殺傷事件」等における報道の在り方について要望や声明を発表してきた。


しかるに、本年7月25日、和歌山市園部地区で起きた毒物混入カレー事件に関する一部の報道機関の取材および報道は、特定の個人の住居を昼夜にわたり監視し、その子どもの写真を撮影するなど、個人の名誉・プライバシーやその家族および近隣住民の生活の平穏を侵害しているばかりか、特定の個人の嫌疑を執拗に探索しようとする傾向が顕著であり、いずれも行き過ぎたものといわざるを得ない。


よって、当連合会は、本事件の取材および報道が上記宣言の趣旨に沿って行われることを要望する。


1998年(平成10年)9月25日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹