刑事対象処罰年齢の引き下げに関する少年法改正問題についての会長談話
中村法務大臣が、本日の閣僚懇談会後の記者会見の席上、現行の刑事罰対象年齢(16歳以上)を引き下げる少年法改正案を、法制審議会に諮問することなく、次期通常国会に提出する方針を表明したとの報道がなされた。
しかし、当連合会としては、刑事罰対象年齢の引き下げには反対である。当連合会は、最近の年少少年による重大事件の発生に対しては重大な関心を持っているが、非行防止の対策は、少年法の改正によるのではなく、事件の原因、背景事情等を科学的、客観的に調査、分析した上で、総合的にたてられるべきである。そして、その視点はあくまでも子どもの尊厳を守り、子どもの最善の利益を実現する立場に置くべきであり、管理的、社会防衛的な発想による厳罰化によって問題を解決することはできない。
また、法制審議会の審議を経ない改正についても反対である。基本法である少年法の改正は極めて重要な問題であるから、幅広い観点からの国民的な論議と法律専門家による議論が不可欠である。これらの要請を満たすためには、法制審議会の審議をできる限り公開し、広く国民の意見を反映させる方策が取られるべきであって、法制審議会への諮問を経ない改正作業は到底容認できないものである。
1998年(平成10年)8月18日
日本弁護士連合会
会長 小堀 樹