インドの核実験に抗議する声明
インド政府は、去る5月11日、ラジャスタン州の核実験場にて地下核実験を3回に亘り実施し、これに対する世界の批判が冷め止まぬ同13日、さらに2回の核実験をも強行した。
国際社会は、1995年5月に核拡散防止条約(NPT)の無期限延長を決め、1996年9月に包括的核実験禁止条約(CTBT)を成立させた。今や核兵器の廃絶とあらゆる核実験の禁止は、世界の潮流である。然るにこの度のインド政府の地下核実験は、世界の流れに逆行する暴挙で、到底容認することはできない。
特に、インド政府は、核廃絶を唱える非同盟諸国運動の先頭に立って活動してきたという歴史的経過があり、また、今回のこの核実験は、本年4月、首都ニューデリー等で広島・長崎の被爆の展示会が開催され、多くの市民がこの核廃絶運動に賛意を示した直後に行われたもので、国際世論に反し、遺憾と言わざるを得ない。
日本は、原子爆弾の投下による被害を受けた唯一の被爆国であり、核兵器の使用が地球環境を破壊し、人間の生命・健康に深刻な被害を与えることを、身をもって体験してきた。このような核兵器の使用や実験は、人類にとって最大の人権侵害であり、国際法に違反することは明らかである。
当連合会は、このような日本国民の核廃絶を求める願いと国際世論を背景として、これまでに核兵器の廃絶に向けて宣言や決議を重ねてきたうえ、アメリカによる未臨界核実験、中国・フランスの地下核実験に対しても、その都度強く抗議を行ってきた。
今回のインドの核実験が、隣国パキスタンの核開発を誘発するなどして、再び核兵器の開発競争の悪循環に陥らないことを願い、インド政府に対して、核実験を再開しないこと、及びCTBTの批准に向けて行動を開始することを求める。
そして、当連合会は、あらゆる国の核兵器が全面的に禁止され、この地球上から核兵器が廃絶される日が早期に実現するよう、今後とも一層の努力を行っていくことを表明する。
1998年(平成10年)5月21日
日本弁護士連合会
会長 小堀 樹