スポーツ振興「くじ」(通称「サッカーくじ」)法成立に関する会長声明

本日、衆議院において、スポーツ振興「くじ」(通称「サッカーくじ」)法が可決・成立し、2年後から実施されることになった。


「サッカーくじ」は、刑法が禁じているとばく行為に該当するものであり、しかも青少年に人気の高いJリーグを対象とする点で、子ども社会に重大な影響を与えることは明らかである。この法律は、19歳未満の子どもへの「くじ」の販売などを禁止しているが、全国のコンビニエンスストアなどで販売することが予定されている以上、子どもの購入をくい止めることは至難である。また、子どもが私設「くじ」(のみ行為)に走るなど、新たな非行の誘因となるおそれが強い。


当連合会は、子どもをめぐる状況の深刻化が指摘されている現在、より良き環境を子どもに提供するのがおとなの責務であり、その一環であるスポーツ振興に必要な予算は政府において措置するのが当然であるとの立場から、この法案については、一貫して反対してきた。その意味で、今回の法案成立はきわめて遺憾である。


国会の審議では、「くじ」導入に伴う悪影響に関する多くの論点について審議が尽くされたとは言えず、今回の採決は拙速であるとの感が強い。国会は、2年間の準備期間において、「くじ」実施の延期を含めて、法律を再検討すべきである。


今回の法律によれば、「くじ」の具体的な運用はほとんどが文部省令にゆだねられており、販売の場所や方法、収益の配分先を決める方法などの詳細は、これから決められることになる。文部省は、子どもへの悪影響を懸念する広範な声に十分耳を傾け、慎重に対応すべきである。


当連合会は、子どもの健全な成長を支えるために、「サッカーくじ」法の施行について、今後とも重大な関心を持って注視し、かつ提言していくものである。


1998年(平成10年)5月12日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹