児童扶養手当の削減に反対し、養育費支払確保策の実現を求める会長声明

日弁連宣言決議
児童扶養手当の削減に反対し、養育費支払確保策の実現を求める会長声明
発表日
平成10年 1月 8日   1998年 1月 8日
表題
児童扶養手当の削減に反対し、養育費支払確保策の実現を求める会長声明
内容
  1. 中央児童福祉審議会児童扶養手当部会は、1997年12月8日、報告書を公表した。同報告書は、厳しい財政状況下での児童扶養手当(以下「手当」という。)の給付費増大を問題とし、手当を見直し、その給付を重点化・効率化・有期化することを提言している。これは、給付費の削減を図るため、所得制限を強化し、かつ現在子どもが高校を卒業するまで支給されている手当の支給期間を短縮することを企図したものである。
    政府与党は、上記報告書を受けるかたちで、手当の所得制限を強化し、1998年8月から一部支給(月額2万7000円)の場合の所得制限を、現行の年収407万8000円から300万円に大幅に切り下げることを決定した。これにより、約7万世帯の母子家庭が手当の支給を受けられなくなる。
  2. 当連合会は、1992年2月「離婚後の養育費支払確保に関する意見書」を公表し、養育費負担義務の明記及び「養育費取決め届出制度」「給与天引き制度」の新設などを提言したが、これらの養育費支払確保策はいまだに実現していない。かかる状況の下で、母子家庭の実態調査や関係者の意見聴取も行われないまま、一方的に所得制限を強化することは、昨今の不況下における母子家庭の厳しい経済状況に対する配慮を欠くものであり、「母子家庭の生活の安定と児童の健全な育成を図る」との制度趣旨にも反するものである。
  3. 当連合会は、養育費支払確保策等をはじめとする母子家庭の自立支援制度が何ら具体化されないまま、手当の所得制限のみを強化することに反対するとともに、直ちに養育費支払確保策を講じて、子どもの健やかな成長を保障するよう強く求めるものである。

1998年(平成10年)1月8日

日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫