スポーツ振興くじ(通称「サッカーくじ」)法案の提出の動向に対する会長声明

議員提案にかかるスポーツ振興くじ(通称「サッカーくじ」)法案が,今通常国会に上程されると報道されている。


サッカーくじは,サッカーゲームの勝敗を予想し結果が的中すれば金銭を得るという性質に照らすと,刑法が禁じているとばく行為に該当するものである。故に公営化したところで,とばくである性格がなくなるものではない。しかも,青少年に人気が高いJリーグを対象とするという点で,青少年の有する憧憬に近いサッカーに対するスポーツ観に悪影響をもたらすおそれがきわめて高い。


この法案は,上記の点を配慮して,19歳未満の子どもにくじを売ることなどを禁ずるとしているが,実施にあたって全国のコンビニエンスストアでくじを販売し,くじの単価は1枚100円を予定しているというのであるから,子どもが購入するのをくい止めることは至難である。


現在パーティー券の売買をめぐる強要・恐喝などの金銭がらみの少年非行が大きな問題となっているが,サッカーくじがこのような非行の新たな誘因となることも予想される。また,違反事件に対する捜査が開始されると,くじを売却した者の取調べにとどまらず,買ったとされる子どもも事情聴取の対象とされ,捜査に伴う新たな子どもへのさまざまな悪影響も危惧される。


加えて,この法案が,サッカー選手,審判およびくじの運営機関の職員らが,くじを購入することを禁止していることをみても,このくじにはとばくに伴う不正がつきまとうおそれがあることを,法案自体が予想しているといえる。


30兆円産業といわれるパチンコ業界の繁栄や公営競馬などの盛り上がりにみるとおり,わが国ではギャンブル社会化がすすんでいるが,この傾向は好ましいものではないことは明らかである。これ以上,さらに新たな公営ギャンブルを創設すべきではない。


スポーツ振興に必要な予算は,現行のスポーツ振興法に基づき,政府において措置するのが本筋である。


以上の理由により,当連合会は,スポーツ振興くじ法案の国会上程に反対するものである。


1997年(平成9年)3月28日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫