児童福祉法等改正法案要綱に関する会長声明
このほど厚生省より、児童福祉法等の一部を改正する法律案要綱が発表された。
当連合会は、かねてから子どもの福祉が子どもの権利条約の理念に基づいて行われるべきことを訴え、子どもの権利条約批准後、最初の法改正となる今回の改正作業に対して、国民各層や各団体とともに関心を払い、作業の進展に応じて意見書を発表するなどして提言を重ねてきた。
しかるに、このたびの法案要綱は、われわれの提言中、主要な部分に応えず、後退の面さえみられ、誠に遺憾である。
第1に、総則規定に、福祉の主体としての子どもの権利につき全く明記されていない。当連合会は、この際、障害者基本法第3条と同様の規定を児童福祉法に新設することを、あらためて強く提案する。
第2に、著しく遅れている、いわゆる要保護の子どもの権利保障に必要な、具体的な法改正がなおざりにされている。親に養育されることができず、施設等で生活する子どもや、親に虐待される子どものために、行政のレベルアップのみならず、この際、大幅な法律改正を行うべきである。
第3に、保育に関しては、措置制度の廃止、保育料の一律的負担を提起しているが、いずれも子どもの保育に対する公的責任をあいまいにし、かえって現行制度より後退させるものである。この点については、なお一層論議を尽くすべきであり、改正を急いではならない。
1997年(平成9年)3月7日
日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫
- 参考
-
障害者基本法・第3条第1項
すべて障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする。