総会屋に対する利益供与事件に関する会長談話

我が国の代表的な大手金融機関、四大証券会社が、長年に亘り、総会屋と癒着し、莫大な金員を巧妙な手口で総会屋に供与していたことが相次いで発覚し、関係役員までが検挙され、内外共に厳しい非難を受けている最中、またもや、複数の大手グル-プ企業が総会屋に利益供与し続けていたことが発覚し、企業社会全体と総会屋との構造的な癒着が続けられていたことが明らかになった。これらは、まさに「日本の風土病」とさえいわれている企業社会の病理現象である。


当連合会は、昭和55年民事介入暴力対策委員会を設置し、暴力団や総会屋等が、市民や企業に対し、民事事件に籍口して介入し不当な利益を得ようとする事件の追放と被害救済活動に取り組んできたところであるが、とりわけ企業に対しては、不当な要求について毅然と対応するよう「トップの意識改革」を提言してきた。


それだけに、今回の一連の企業不祥事については極めて遺憾と言わざるを得ず、今こそ、経済界あげて企業倫理の確立と経営の健全化を図るため抜本的な改革に具体的に着手すべきである。


そのためには、総会屋・暴力団の不当な要求に対しては、毅然とした姿勢で断固拒否すると共に、株主総会についても短時間で終了させること自体を競い合い、「シャンシャン総会」と揶揄されるような運営を改め、株主重視の健全な総会を目指すべきである。


また、現在、一連の企業不祥事に関して株主代表訴訟が提起され、企業経営者の責任が追求されているが、これらは、経営の監視システムの一つとして、現行法上で現実に有効に機能している。しかるに、近時、一部政党や経営者団体から、株主代表訴訟の急増が経営を萎縮させているとして、例えば、取締役の責任の軽減、提訴資格の制限、監査投の全員一致による提訴の請求の却下など、「株主代表訴訟の見直し論」が提唱されているが、当連合会としては、現行制度の実効性を失わしめるような法改正には反対である。


日本の風土病といわれている現在の企業の病理現象を根絶するためには、「株主代表訴訟の見直し」よりまず「トップの意識改革」が急務といえよう。


当連合会としては、企業社会の健全化、公正化を期待するとともに、引き続き関係諸機関と連携しながら、総会屋等の排除や企業における法の支配の確立に一層全力を拳げて取り組むことを決意するものである。


1997年(平成9年)11月9日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫