平成9年度司法試験最終合格者発表に関する会長声明
本日、平成9年度司法試験の最終合格者が発表された。746人の新しい法曹の後継者の誕生を心から歓迎し、今後の修習において法律実務家として一層成長されることを期待する。
ところで、本年度の司法試験においては、昨年度に引き続き、論文式試験において少数回・短期間受験者を優遇する特別合格枠制(以下、丙案という)が実施された。その結果、10月1日に発表された論文式試験結果について、法務省によると、全合格者に占める受験期間3年以内の合格者の割合は57.7%(昨年度は56.1%)、5年以内の合格者の割合は72.5%(昨年度は72.8%)と昨年度に引き続き高い割合を示している。
同試験の成績に基づき、丙案を実施せずに成績順に合否を判定してみても、受験期間3年以内の合格者の割合は約40%(昨年度は約41%)、5年以内の合格者の割合は約61%(昨年度は62%)と、これもまた高率を維持し、結果として平成2年10月の法曹三者の基本合意において丙案を実施しない目安として定められていた検証基準(3年以内=30%、5年以内=60%)をいずれも上回っている。
一方、上記論文式試験においては、丙案により、成績順位が1100番台の受験生が合格する一方、500番台の受験生が不合格になっており、丙案のもつ不平等性が改めて明らかになっている。
当連合会は、このような結果を踏まえ、三者協議会において、丙案のもつ不平等性に加え、その導入の理由とされていた長期受験者の滞留現象の改善が顕著に現れていることなどを指摘し、できる限り早期に丙案を廃止すべきであると提言した。 その結果、三者協議会においては、最高裁・法務省ともに、日弁連の提言を受け止める旨の意見表明がなされ、日弁連の提言を含め、法曹の選抜及び養成のあり方について、広く、かつ、真摯に検討するため、法曹三者が速やかに協議を開始することが合意された。
当連合会は、引き続き、この協議の場をはじめとして、あらゆる機会を通じて、丙案の早期廃止のために努力を尽くす所存である。
1997年(平成9年)10月31日
日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫