松浦法務大臣発言に対する会長談話

昨日、法務大臣記者懇談会において、松浦法務大臣は、司法制度の改革をめぐる協議の方法について、「法曹三者なんて言い方はおかしい。法曹二者で進めていけばいい」(朝日9月6日付朝刊)、「司法制度は、法務省と最高裁がイニシアチブを取って改革すべきだ」(同読売)などとして司法制度の改革への当連合会の関与を否定するが如き見解を表明したとの報道に接した。


法曹三者協議会は、司法に関する問題はまず法曹三者において十分な議論をしたのち国会に上程すべしとの衆参法務委員会の付帯決議に基づき、1975年以来その時々の司法制度の改善・改革をテーマに行われてきたものである。とりわけ、昨年7月からの法曹養成制度改革を中心とする協議には、当連合会も会内の真摯な議論を踏まえてこれに関与してきており、今まさに議論が大詰めを迎えようとしているこの時期になされた法務大臣の今回の発言は、当連合会に対する重大な侮辱と受け止める。のみならずこの発言は、三者協議会は法務省・最高裁判所がイニシアチブを採るべきであるとするものであって、その発想は官僚主導による司法制度改革を標榜するものでり、時代錯誤の官尊民卑思想にたつものと言わざるを得ない。


当連合会は、民主的で国民にとって利用しやすい司法を確立するための制度改革をかねてから訴え、今次三者協議会においてもその旨を強く訴えている。これは、従来から指摘される官僚司法制度の弊害を改革し、司法を国民のものにとの発想に基づくものである。 もとより、国民にとって重大な利害を有する司法制度の改革について、その当事者である法曹三者のみによって全てを決し得るわけでないことは、当連合会としても当然認識している。しかし、法的紛争に関わる国民にとって弁護士は最も身近な存在であり、司法に携わる当事者が先ず問題点を指摘・提言し、広く国民にその判断を求めることは民主的な制度改革のための正しい方法であると確信している。


当連合会は、法務大臣のかかる発言に対して抗議すると同時に、今後とも真に国民にとっての司法改革とは何かを追求し、これを世に問うていく所存である。


1997年(平成9年)9月6日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫