神戸小学生殺人事件に関する報道のあり方についての会長声明
本年5月に神戸市内で発生した小学生殺人事件については、6月28日に神戸市内の14歳の中学3年生が被疑者として逮捕され、現在警察による捜査が進行している。
ところが、本日発売された写真週刊誌は、この事件の被疑者であるとされた少年の写真と家族についての記事を掲載したが、これは少年法の精神を踏みにじるものであって、いかに報道の自由を尊重するにせよ、絶対に許されるものではない。
少年法は、少年の健全育成を第一の目的とするものであって、この目的を達成するために、同法第22条第2項において少年審判を非公開とし、同法第61条は家庭裁判所の審判に付された少年については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等により、その者が当該事件の本人であることを推知できるような記事又は写真を出版物に掲載することを禁止しており、この規定は審判に付される以前の捜査段階にも適用されると解されている。さらに少年警察活動要綱第13条第2項及び犯罪捜査規範第206条が警察による少年事件の内容を報道機関に発表することを禁止していることも、前述の少年法の精神と軌を一にするものである。
当連合会は、今回の写真及び記事の掲載が、少年の人権を著しく侵害するものであることに強く抗議し、これを行った出版社に対して猛省を求めるとともに、あらゆる報道機関に対して、それが被害者、加害者いずれについてであれ、自らが定めた倫理綱領及び少年法の精神を遵守して、少年及びその関係者の人権を侵害することのないよう、慎重な報道をされるよう強く要望する。
1997年(平成9年)7月2日
日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫