臓器移植法案についての参議院にふさわしい審議を望む

  1. 参議院で審議中の臓器移植法案について、6月10日、自民党、平成会など4会派の共同修正案が、突然報道関係者に発表された。これは、衆議院から送付された中山案の「修正案」と伝えられる。
  2. 参議院は、臓器の移植に関する特別委員会を設置し、慎重な審議を行い、国民の期待に応える旨、表明してきた。
    ところが、同特別委員会においては5月29日、6月2日の2回の審議と6月9日の救命救急センター視察がなされたのみで、6月11日の委員会集中審議でも「修正案」は提出されておらず、その問題点をめぐる審議もなされなかった。
    しかも、各界の意見を聴くための6月12日地方公聴会、13日中央公聴会にも、その「修正案」は正式には参考人の意見の対象とはなされていない。
    また、参考人の意見を全議員に周知するいとまもないままに、6月16日「修正案」の提出、即日、参議院本会議で可決、衆議院への回付があたかも既成事実であるかのように報道されている。
  3. 人の生死にかかわる重要な法律案が、採決当日まで「修正案」が提出されず、実質審議を欠いたまま可決されるとすれば、議会制民主主義の空洞化をもたらすものといわざるをえない。
  4. 「修正案」は、その内容からみても、臓器移植の場合に限り脳死を人の死とするのか、あるいは脳死をすべて死とするのか(第1条と提案理由は中山案のままである)が不明であり、これが中山案に対する修正案といえるのかも含めて、これらの問題点が解明されないまま、成立がはかられようとしている。
  5. 当連合会は、かねてから脳死を人の死とせず、臓器移植の道をひらくよう提案してきた。この提案の趣旨は、国民世論のうえでも、支持を広げてきている。
  6. われわれは、参議院が真に「良識の府」にふさわしくその独自性を発揮して、歴史の批判に耐えうる審議を尽くされるよう心より望むものである。

1997年(平成9年)6月13日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫