憲法記念日に向けての記者会見(5月2日)における、最高裁判所長官の「オウムの麻原彰晃こと松本被告人の国選弁護団が審理をボイコットした問題」に関する発言に対して

この度の、最高裁判所長官の発言は、憲法記念日に向けてのものであり、国民の関心が寄せられる事件について所信を述べられることは、理解できないものではありません。ただ、長官の職責上、現在東京地方裁判所に係属中の事件について、国選弁護人の活動等につき具体的に見解を表明することは、些か問題があると考えざるを得ません。具体的刑事被告事件において、裁判所と弁護人の間で意見の相違があり、当事者が対立しながらも、審理の前進のために努力している問題につき、司法行政上最高の職責にある長官が、12名の弁護人の事件分担や活動にまで言及するのは、どう見ても、個別事件への影響があるといわれても止むを得ないものであり、その職責を考えると疑問なしとしません。


今後、最高裁判所長官の立場から、市民の裁判所への信頼を一層得られるよう留意されんことを切望しております。


1997年(平成9年)5月8日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫