持株会社の解禁に関する声明

政府は,規制緩和政策の推進として,持株会社を原則として解禁する方向での独占禁止法改正案の立法化を進めているといわれている。 持株会社を禁止する独占禁止法9条は,財閥解体とその復活阻止のための政策の柱であって,わが国経済社会の民主化を進める上で,大きな役割を果たし,多くの国民の支持を得てきた。


公正取引委員会は,1995年(平成7年)12月27日,経済学者や経済人から構成される独占禁止法第4章改正問題研究会から,持株会社禁止制度のあり方についての中間報告書の提出を受けた。この中間報告書は,財閥復活につながる企業の系列化にならない場合に限って,持株会社の部分的解禁の方針を示したのである。


公正取引委員会は,この中間報告書に基づき,持株会社禁止制度の目的に反しない範囲内で持株会社の設立を部分的に解禁する方向で独占禁止法改正案を作成する方針を公表していたところ,本年になって,急遽この方針を転換し,中間報告書とは異なり持株会社を原則的に解禁する方向で法案作りを急いでいると報道されているに至っている。


これまでこの問題を検討してきた独占禁止法第4章改正問題研究会が,部分的解禁の方針を示しているにもかかわらず,国民の十分な議論を尽くすことなく,この方針を性急に転換し,原則的解禁とするというがごとき政策の大転換は,国民の納得理解を得ることは到底できないであろう。


日本弁護士連合会としては,持株会社の問題については,性急な法律改正を行うことなく,広範な国民の意見を十分に聞き,国民の納得できる事由に基づき適切な,かつ賢明な解決がなされるよう切望するものである。


1996年(平成8年)3月1日


日本弁護士連合会
会長 土屋公献