平成8年度司法試験最終合格発表に関する会長声明

本日、平成8年度司法試験の最終合格者が発表された。734名の新しい法曹の後継者の誕生を心から歓迎し、今後の修習において法律実務家として一層成長されることを期待する。


ところで、本年度の司法試験では、論文式試験において、史上初めて少数回・短期間受験者を優遇する特別合格枠制(以下、丙案という。)が実施された。その結果、10月2日に発表された論文式試験結果について、法務者によると、丙案の実施により、全合格者に占める受験期間3年以内の合格者の割合は56.1%、同5年以内の合格者の割合は72.8%と大幅に増加したとのことである。


ところが、同試験の成績に基づき丙案を実施せずに成績順に合否を判定してみると、受験期間3年以内の合格者の割合は約41%、同5年以内の合格者の割合は約62%に達している。


これらはいずれも、平成2年10月の法曹三者の基本合意における検証基準の数値(3年以内=30%、5年以内=60%)を大きく上回るものである。この結果をもたらした原因として、法務省は丙案実施の効果である旨評価しているが、当連合会としては平成2年当時から提案していた合格者増員の効果こそ有力な要因と考えるものである。


それにしても、本年度の論文試験では、丙案により、成績順位が約1,100番の受験生が合格する一方、500番台の受験生が不合格となっており、丙案のもつ不平等性が改めて明確になっている。


法曹三者は、司法試験合格者を将来的に1,000名に増加させることでは意見の一致をみており、現在、法曹三者協議会において、合格者を増加させる場合の司法関連制度の整備・充実、合格者を1,000名に増加させる時期・司法修習のあり方、試験の方法、合格者の年間1,500名程度への増加を図る上での問題点などについて協議を行っている。


この法曹三者協議会は、わが国の司法制度を国民に身近で開かれたものに改革し、それにふさわしい試験制度・修習制度を実現していく上で、非常に重要な意義を有するものである。


当連合会は、この法曹三者協議会の協議に真摯に臨むとともに、不平等性を帯有する丙案を早期に廃止できるよう努力を尽くす所存である。


1996年(平成8年)11月1日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫