調布駅南口事件判決に対する声明
東京地方裁判所八王子支部は、平成7年6月20日、京王線調布駅南口広場で起きた傷害事件について、傷害罪等で起訴された5人のうちの1人について分離して公訴棄却の判決を言い渡した。
本件は、被告人らが、家庭裁判所において同事件により中等少年院送致の決定を受け、これを不服として抗告した結果、抗告審である東京高等裁判所が原決定には非行事実について重大な事実誤認があることを認め、原決定を取り消し、差戻したところ、差戻審である東京家庭裁判所八王子支部は、その1人について非行事実が認められないとして不処分の決定をしたが、他の4人については直ちに不処分決定をせず、そのうちの1人については年令超過による検察官送致決定を、残り3人については少年法20条により刑事処分相当として検察官送致決定をそれぞれ行ない、これを受けた東京地方検察庁八王子支部は、平成6年2月28日、既に不処分決定を受けた者も含む5人を起訴したというものである。
日本弁護士連合会においては、平成6年3月29日、本件起訴に対して強く遺憾の意 を表明する旨の会長声明を発表した。今回の東京地方裁判所八王子支部の判決は、保護処分決定に対する少年の抗告についても不利益変更禁止の法理が適用されるとしたうえ、本件差戻審の検察官送致決定は原審家庭裁判所の中等少年院送致決定を不利益に変更したものであって、不利益変更禁止の原則に抵触する違法、無効な措置であり、この検察官送致決定を受けてなされた本件起訴もまた違法、無効なものであると明快に判断したもので、少年の保護処分決定に対する抗告権を実質的に保障する妥当な判決と評価できるものである。検察官は控訴することなく、被告人を直ちに刑事手続から解放すべきである。
また、残る4人の被告人らについても、事情は今回の判決を受けた被告人と本質的に異なるものではなく、本件起訴は、憲法39条、少年法46条に定める二重の危険禁止の法理あるいは不利益変更禁止の法理に反し、少年司法における権利保障を危うくするものであって、司法に対する国民の信頼まで揺るがせかねない違法不当な措置であるから、公訴棄却または免訴の判決あるいは公訴の取消により、速やかに被告人らを刑事手続から解放することを期待する。
1995年(平成7年)6月29日
日本弁護士連合会
会長 土屋公献