水俣病の早期解決を求める会長声明

水俣病は、わが国の高度経済成長期に多発した公害の一つであるが、その発生態様、被害の特徴等から、公害の原点といわれている。水俣病被害者はまさしく高度経済成長の犠牲者であった。


当連合会は、かねてから、わが国の環境行政の前進のためには水俣病問題の早期解決こそ不可欠であると主張してきた。


しかるに、1956年の水俣病公式発見から38年が経過し、被害者が高齢化して死亡する者が続出しているにもかかわらず、いまだに多数の被害者が救済されずに放置されているのは、誠に遺憾である。


水俣病訴訟においては、福岡高等裁判所の和解協議において、裁判所の最終和解案が示され、被告国を除く原被告双方の当事者もこれに基本的に同意していると伝えられている。和解による早期全面解決が実現するか否かは、まさに国の決断にかかっている。


ところで、福岡高等裁判所の水俣病訴訟は結審してからすでに1年余が経過し、近く判決が予想されている。しかし、一たび判決が言い渡され、上告されると最高裁判所に事件が係属することになり、早期解決が遠のくのは避けられない。そのため、福岡高等裁判所の判決前に細川総理が解決のための政治的決断をすることが求められている。


水俣病問題の早期解決は、今や国民の一致した世論となっている。


当連合会としても、すみやかに細川総理が解決の決断をして、水俣病問題の全面解決を図るよう切望するものである。


1994年(平成6年)3月29日


日本弁護士連合会
会長 阿部三郎