企業幹部に対する犯罪に関する声明

「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」は、平成4年3月1日施行されたが、その施行に伴い暴力団同士の抗争事件が激減し、また暴力団が前面に出ての民事介入暴力事案は減少傾向にある。


しかし反面、平成4年6月以降企業の幹部および企業の建物に対する凶悪な襲撃事件は多発し、本年9月7日から10日までの間に北九州地区で企業等の建物に対するピストルの連続発砲事件が13件に達し、さらに、9月14日早朝住友銀行名古屋支店長が自宅マンション10階通路でパジャマ姿のまま射殺されるに至った。


これら一連の行為をみると、偶発的に発生した事件ではなく、目的を遂げるためには、手段を選ばず、意に添わない者に対してはその生命まで奪うことを意図したもので、民主主義に対する挑戦と評さざるをえない。


日本弁護士連合会は、関係機関の協力を得て、民事介入暴力の根絶のため、その被害の予防活動および被害者の救済活動に全力を注ぎ、様々な運動を行ってきた。また市民・企業にも暴力追放の気運が全国的な規模で盛り上がってきている。この気運を後退させてはならない。


われわれは、関係当局に対し、これまでの犯罪とは質的に変貌してきた企業幹部等に対する犯罪、とくに阪和銀行副頭取射殺事件、富士写真フィルム専務刺殺事件、住友銀行名古屋支店長射殺事件における犯人の早期検挙と、事件の実態の早期解明を求めると共に、かかる事件が再発しないよう企業との連携による警戒警備体制の充実をはかるよう強く要望する。


また、われわれは、被害企業に対し、事件発生後も違法・不当な要求に対しては企業が一体となって毅然たる対応を講じることを求めると共に、事件発生に至るまでの兆候を再点検し官民一体となって凶悪事件解決のための連携体制を実施することを強く要望する。当連合会は、これら一連の事件を契機に民事介入暴力根絶のため、今後も不断の努力を継続し、国民の要望に応えられるようその活動を強力に進めていく決意である。


1994年(平成6年)9月20日


日本弁護士連合会
会長 土屋公献