PL法案に輸血用血液製剤を含むべきでないとする日本輸出学会声明に関する談話

当連合会はかねてより、現代社会において製造物に内在する危険の公平かつ効率的な分配のために、わが国においても製造物責任制度を導入すべきこと、および輸血用血液製剤もその対象に含めるべきことを提言してきた。


今国会で審議中の製造物責任法案に関して、6月11日、日本輸血学会は、「輸血用血液(全血液製剤および血液成分製剤)は基本的には加工処理されておらず、代替品がないうえ、異なった献血者から得られるため画一的な安定供給は不可能であり、完全な血液を追求しなければならず製造の一時中止も想定しえ、十分な血液が確保されず必要な手術治療が不可能になる可能性がある」などを指摘して、同法案の対象に含めるべきでないとする声明を発表した。さらに湯浅晋治同学会会長は、「検査の限界もあり、輸血感染などどうしても避けられない特殊性があることを踏まえてほしい」と話したと伝えられる(6月12日付朝日新聞)。


しかしながら、これらの製剤は日本赤十字血液センターによって、感染症等への羅患の有無について様々の検査をし、クエン酸他からなる抗凝固剤(保存液)を加え、成分製剤はさらに遠心分離等によって分離され、包装して大量に供給される製剤であり、同法案における製造物に該当するものである。


日本赤十字社の発表によれば、検査方法の改良により急速に改善をみているが、1991年において輸血後C型肝炎の発生率は1.9%乃至3.3%である。輸血学会の見解は、輸血後肝炎等に罹患する危険性がこのように高いことを理由とするものである。血液製剤の利用者に対する危険性を減少するために、供給者において検査技術を可能な限り高め、その上でも避けがたい危険性があれば、当該被害者の個人的負担とするのではなく、利用者全体で薄く負担することが製造物責任の制度の意義である。本剤の危険性の高さをもって対象外とするならば、わが国で製造物責任制度を導入する趣旨を大きく減殺ことになりかねない。実際、EU諸国では製造物責任制度の対象とされているが、安定的供給に何等支障は生じていない。


また血液製剤については、日本赤十字社が医薬品として単独供給していることに照せば、危険の公平で効率的な分配という本制度の趣旨を最も実現しやすい環境にある。輸血者においても、利用者に輸血後肝炎等をもたらすことがないよう十分な措置がとられた血液製剤が製造されることを期待して献血事業に応じているのであって、安全性確保と内在する危険による被害者への補償がなされることこそ、献血者の善意に応えるものといわなければならない。


以上のとおり、現在審議中の製造物責任法案の対象から輸血用血液製剤を除外する理由はなく、むしろ積極的に加えるべきである。


1994年(平成6年)6月13日


日本弁護士連合会
会長 土屋公献