借地借家法の見直しに関する声明

新聞報道等によると、土地・住宅の規制緩和の一環として借地借家法の見直しが行政改革推進本部において検討されているとのことである。


その内容は、定期借地権の期間を50年から30年に短縮すること、また、前回の改正で見送られた定期借家権も創設するなど重要な事項を含むもののようである。


その理由とするところは、本来自由であるべき土地・建物の賃貸借契約につき、これが規制されているので規制を廃止し、平等な賃貸市場を形成すべきであるというもののようである。


しかしながら、これらについては次の如き問題点を指摘することができる。


  1. 借地借家法の定めるものは、国民の基本的な権利にかかわることであって許認可行政の問題とは別の次元の問題であり、これと同視するのは適切でない。
  2. 借地借家法は、法制審議会を中心に各界の意見を聴取し、長期にわたる慎重な審議の結果得た結論として、平成4年8月1日施行され、未だ2年も経過していない。それにもかかわらず今回その見直しが検討されているということは不可解である。
  3. 定期借地権を50年から30年に短縮すると、普通借地権との境界はなくなり、正当事由・法定更新の制度が実質的に消滅するおそれがある。
  4. 今回検討されている改正の効力を既存契約に及ぼすということになれば、その結果はまことに重大なものとなるといわざるをえない。

その他、今回考えられている見直しによって、直ちに低価格の住宅が提供されることになるかについては疑問もあり、検討されている借地借家法の見直しには反対である。


1994年(平成6年)5月20日


日本弁護士連合会
会長 土屋公献