永野法務大臣の発言に関する声明

法務大臣永野茂門氏は本日午後3時の記者会見において、さきに太平洋戦争について「侵略戦争という定義付けは間違っていると思う。戦争目的そのものは当時としては基本的に許される正当なものだった」また、南京大虐殺について「あれはでっち上げだったと思う」との見解を表明したことを自認し、これを撤回した。


いうまでもなく、法務大臣は、わが国法務行政の最高責任者として国籍のいかんを問わずすべて人々に基本的人権の享受と正当な権利主張の機会を保障すべき重責を負っている。その職責からしても、さきの戦争について歴史を直視することなく、無定見な言動に及んだことには、失望を禁じえない。


当連合会は、昨年10月29日開催の第36回人権擁護大会の「戦争における人権侵害の回復を求める宣言」において、さきの戦争でわが国がアジア・太平洋地域に深刻な被害をもたらし、そのなかには住民虐殺その他重大な人権侵害にあたるものが数多く存在する、との認識のもとに、真相の究明を徹底して行うこと、適切可能な被害回復措置のあり方について早急に検討を「開始すること、この戦争の実相を正しく後世に伝える教育を行うこと、の3点を国に対し要請した。法務省には、この問題に関する主管官庁として、上記要請について真摯な対応が求められるところである。


しかるに、永野氏の上記見解表明は、本問題についての同氏の真意を示したものと察せられ、たとえ撤回したとはいえ、同氏に上記要請への真摯な対処は到底期待しえない。


よって、当連合会は同氏に対し、みずからの責任においてその進退を決せられるよう、勧告する。


1994年(平成6年)5月6日


日本弁護士連合会
会長 土屋公献