野党提案の行政情報公開法(案)に関する会長コメント

今回提出された法案は情報公開に関する論議を深め、促進するうえで一歩前進と評価したい。


しかしこの法案には、適用除外規定のあり方などさらに論議を尽すべき課題を残している。


当連合会は、現在、あるべき姿をめざして「情報公開法大綱」を作成中であり、近く公表する。


今後各界のえい知を集め、「知る権利」を実質的に保障する情報公開法が制定されることを強く望むものである。


会長コメントについての説明


今般、社会・公明・民社・社民連・民主改革連合・日本新党により取り纏められた行政情報公開法(案)が参議院に提出された。これは基本的人権としての「知る権利」を制度的に保障しようとする情報公開制度の確立に向けての前進と考えたい。


民主主義の健全な発展には、情報の自由で豊かな流れを実質的に保障する情報公開制度を確立することが必要かつ不可欠である。このたびの法案は、情報公開が「知る権利」を制度的に保障しようとするためのものであるとの正しい認識を示している点は評価できる。しかし、同法案は公開から除外される情報の範囲を厳格に規定していないから運用によっては広汎な情報が不開示とされ情報公開制度を形骸化させる恐れがある。特に、わが国における伝統的ともみられる官僚体制と行政秘密主義の管理体制のもとでは適用除外を定める規定が秘密保護の論理に利用される危険性がある。従って、そのような危険性を払拭するため、除外規定を明確かつ限定的な規定とすべく論議されなければならない。


日本弁護士連合会は、既に1980年の第23回人権擁護大会において情報公開法の速やかな制定を求め、さらに、1990年の第33回人権擁護大会において情報主権の確立に関する宣言をするなどして、情報公開制度の確立を求めてきた。そして、現在国民の知る権利を実質的に保障する真の情報公開制度の確立を目指してその大綱を示す「情報公開法大綱」を策定しており、近く公表の予定である。


われわれは、上記法案の提出が機縁となって、情報公開制度の確立に向けて、国会はもとより国民の間に広く論議され、民主主義の根幹ともいうべき「知る権利」を実質的に保障する真の「情報公開法」が制定されることを望んでやまない。


1993年(平成5年)6月7日
日本弁護士連合会