精神保健法等の一部を改正する法律案に対する声明
今般、政府は精神保健法等の一部を改正する法律案を国会に上程した。これは、1988 年に施行された精神保健法の附則により要請されていた、いわゆる5年後の見直し規定にもとづくものであり、改正案が政府の手で国会に上程されたこと自体は積極的に評価しうるものである。
しかしながら、提案された改正案の内容を検討すると、前回の改正が応急的なものであり、その実施5年後の結果を見て、精神医療審査会や保護義務者制度等につき、より根本的な改正が行われるとの期待に反し、いまだ過渡的かつ部分的改正に止まっていると評価せざるをえない。
我が日本弁護士連合会は、1991年12月国連総会で決議「精神病者の保護及び精神保健ケアの改善」が採択されたことに関し、会長声明を発し、上記国連決議の定める精神障害者の人権保障の最低基準が予想される将来の法改正に全面的に採り入れられるよう要望し又、1992年6月には精神保健法見直しに関する意見書を発表して、懸案となっていた精神障害者の定義、保護義務者制度をはじめとする13項目にわたる基本的な問題につき根本的改正を要望したところである。
我々は精神障害者の人権保障のため引き続き法の根本的改正が必要であり、再度、法の改正の機会を保障すべきものと考える。
これを保障するため、少なくとも今回の法改正においても、現行法附則第9条と同旨の規定を法律上明記されるよう求めるものである。
1993年(平成5年)6月2日
日本弁護士連合会
会長 阿部三郎