国民生活審議会による製造物責任制度についての最終報告書に関する談話
国民生活審議会は、本日「製造物責任制度を中心とした総合的な消費者被害防止・救済の在り方について」と題する製造物責任制度についての最終報告書をまとめ、細川護煕内閣総理大臣に答申した。
当連合会は、わが国における欠陥製品被害と救済の実態を踏まえ、かつ、欧米豪における法制度及びその運用の実態を調査したうえで、
- 「欠陥」とは、消費者の期待する安全性を欠く状態をいうものとする。
- 欠陥および因果関係の推定規定を設けること。
- 製品の安全性に関する情報を所持する者に開示を義務付けること。
- 開発危険の抗弁は認めないこと。
を骨子とする製造物責任の制定を求めてきた。
今回の最終報告書は、「欠陥」を責任要件とする法制化は是としたものの、当連合会の上記提案はいずれも取り入れられていない。
その問題点については、当連合会が本年12月3日付意見書で既に明らかにしているところであるが、欠陥概念を不当に狭くし、推定規定及び証拠開示の規定を導入せず、被害者の証明負担の軽減が図られていないこと、開発危険の抗弁を導入したこと、損害の範囲、適用対象製品および責任期間を限定したことは、遺憾である。
とりわけ欠陥概念につき、以下の問題点があり、本報告書の内容は到底容認できないものである。
まず、「消費者期待基準」をとらず、欠陥の重要な判断基準として、製造者側の視点に基づき、「製品の効用・有用性」「製品の価格対効果」「技術的実現可能性」「被害発生の蓋然性とその程度」「製品の通常使用期間・耐用期間」など、欠陥概念を不当に狭くする判断基準を持ち込み、かつ、これらを法律自体に盛り込むことの必要性を指摘している点である。
さらに、被害者が、基本的に欠陥の部位までを特定する必要があるとしている点である。
このような欠陥概念を前提とするなら、現行の過失責任による救済をも後退させかねないものとなる。
製造物責任の法制化に向けての今後の立法作業において、欠陥とは消費者の期待する安全性を欠く状態をいうものとし、本報告書が掲げる「製品の効用・有用性」「製品の価格対効果」その他の判断基準を付け加えるべきでない。
日本弁護士連合会は、消費者団体とともに、今後とも引き続き、消費者のための製造物責任法の制定に向けて努力するものである。
1993年(平成5年)12月10日
日本弁護士連合会
会長 阿部三郎