水俣病第三次訴訟の熊本地方裁判所判決に対する会長声明

熊本地方裁判所は、去る3月25日、水俣病第三次訴訟(第二陣)で水俣病拡大に対する行政の法的責任を認める判決を言い渡した。


水俣病の公式発見以来すでに37年が経過し、これまで何度も水俣病訴訟判決が出されたが、それにもかかわらず、多数の被害者が救済されることなく放置されてきたため、高齢化した被害者が相次いで死亡していると伝えられている。事態はもはや一刻の猶予もならないところまできており、公害被害者の人権問題としてもとうてい容認することができない。


折りしも、福岡高等裁判所を中心に2年以上にわたって行われてきた水俣病訴訟の和解協議において、裁判所から最終和解案が提示されたが、国が和解に参加していないため、いまだに解決の見通しがたっていない。


現在、国の環境保全政策の根幹となるべき環境基本法案が国会に上程されている。しかし、足もとの公害である水俣病問題の解決なくしては環境基本法は画餅に帰するものといわざるをえない。


当連合会は、人権擁護の立場から、昭和56年からこの問題についての調査研究を重ね、被害者の即時・完全救済等を求める決議、具体的方策の提言などを行い、平成2年10月には、会長声明により国に対し和解勧告を受け入れるよう求めたが、今回の判決を機に、改めて国に対し水俣病問題の早期全面解決のための政治的な決断をすることを求めるものである。


1993年(平成5年)4月12日


日本弁護士連合会
会長 阿部三郎