死刑執行に対する会長声明

1993年11月26日、大阪拘置所、東京拘置所、札幌拘置支所で、4名の死刑確定者に相次いでその執行がなされていたことが報道機関により報じられた。


これは、本年3月26日に3名の死刑確定者に対して執行がなされたのに続くものである。


当連合会は、本年5月6日に上記3月の死刑執行について、


  1. 死刑制度の存廃について、「死刑廃止条約」の批准の是非を含めて、国会内外で国民的議論を早急に尽くすべきであること、
  2. 国民的議論が尽くされるまでは執行を見合わすべきであり、法務大臣は今後死刑執行について慎重の上にも慎重を期し、その執行を差し控えるべきである

との会長談話を発表した。


しかも、国際人権(自由権)規約委員会が、国際人権(自由権)規約の実施状況に関する日本政府第3回報告書を審査した本年11月5日に、日本政府に、死刑の廃止への措置と受刑者の処遇改善を勧告したという状況もある。


その趣旨が全く考慮されなかったのは、誠に遺憾である。


当連合会は、重ねて、法務大臣が国民的議論が尽くされるまで執行を差し控えられるよう望むものである。


当連合会としても、本年5月に「死刑制度問題に関する連絡協議会」を設置して、死刑制度の存廃に関する会内討議の進め方などについて検討を開始しており、各弁護士会においても、この問題について関連委員会において論議を行い、あるいは会員を対象とするアンケートを実施するなど論議が広がっている。今後も、死刑制度存廃についての会内討議を徹底的に行うことを重ねて表明するものである。


1993年(平成5年)12月3日


日本弁護士連合会
会長 阿部三郎