山本事件特別抗告棄却決定について

最高裁判所(第一小法廷)は、10月17日付で、山本事件・山本久雄氏にかかる再審請求について、特別抗告を棄却する決定をした。


この決定は、長い期間をかけた審理にしては、実質的な理由を何ら示さず、単に形式的な判断に終始し、誠に遺憾というほかない。


当連合会は、昭和58年10月以来、山本氏の再審を支援してきたが、戦前の旧刑事訴訟法下における非常に困難な事件であるにも拘わらず、弁護団の熱心な活動により、三つの新鑑定その他の立証活動の成果として、確定判決の事実認定に合理的な疑いが生じ、新たに冤罪者が救済されるものと確信していた。


しかるに、残念なことに最高裁判所及び原審である広島高等裁判所は、新証拠に対して正当な評価を行うことなく、本件再審請求を頑に斥け、白鳥・財田川決定以来営々と築かれた再審法理に逆行する姿勢を示したものであるといわざるを得ない。


無実を叫び続けてきた90歳を超える高齢の山本氏の憤りは、察するに余りある。


当連合会は、今後も、冤罪者の救済と誤判の根絶をめざして、無辜の救済のための再審法改正の早期実現と誤判の温床である代用監獄の廃止のため、力を尽くしていく所存である。


1990年(平成2年)10月19日


日本弁護士連合会
会長 中坊公平