国連「子どもの権利に関する条約」採択に係るわが国政府の批准の促進に向けて

平成元年11月20日国際連合総会は子どもの権利条約を採択した。この条約は、子どもの成長を援助する責務の第一次的な担い手は、親・家族であり、国はその責務の行使を尊重しなければならないこと、子どもは保護されるだけではなく、意見を持ち、意思を表明し、行動する権利を有することを明確にし、家庭・学校・地域・施設・少年司法などそれぞれの分野における子どもの権利保障を具体的に明らかにした画期的なものである。


当会は昭和60年10月の秋田市で開催した第28回人権擁護大会において、学校生活と子どもの人権に関する宣言を採択し、各地で相談窓口を開くなどして子どもの権利確立とその侵害の救済に力を尽くしてきた。しかしわが国においては、未だ子どもが権利の主体として、決定し行動する権利を有することのへの認識は薄く、例えば校則・体罰・内申書を軸にした学校の管理教育が一般化し、いじめ・不登校・中途退学が拡がり、少年司法においては、本来、子どもの言い分を重視する個別的・具体的な運用がなされるべきところ、現状はこれが常に尽されているとは言えず、画一的な運用が強化され、また警察の行き過ぎた捜査も後をたたないなど、おおくの分野で深刻な事態にある。


われわれは、この権利条約の採択を、こうしたわが国の現状を変え、子どもの人権の確立・救済に大きく寄与するものとして高く評価し、あらゆる人々と手を携えて、この条約の定める権利の実現に努力するとともに、政府が速やかにこの条約を批准し同条約の線にそって国内法の整備を進めること要望する。


1989年(平成元年)11月21日


日本弁護士連合会
会長 藤井 英男