島田事件再審無罪判決言渡しについて
本日、島田事件の赤堀政夫氏に対して、静岡地方裁判所は再審無罪の判決を言渡した。逮捕以来35年目の無罪判決である。この間赤堀氏は、死刑台ととなりあわせにおかれ、日夜死刑執行の恐怖におびえながら無実を訴えつづけてきた。 この日のためにながい困難なたたかいをすすめてきた本人と家族、弁護団、支援関係者のみなさんの労苦をねぎらい共に喜ぶものである。
なかでも、捜査段階から再審まで一貫して赤堀氏を支え、無罪獲得のため血の滲む努力を傾注されてきた静岡県弁護士会の鈴木信雄、大蔵敏彦両氏(鈴木弁護人は赤堀無罪をと心に残しつつ先年逝去された)の献身的活動の跡はわが国再審弁護団の歴史に輝かしい1頁を加えたものとして高く評価されるべきである。
昭和58年の免田事件以来5年余の間に財田川、松山および島田と4件もの死刑確定事件について無実を罰した大誤判が明らかにされた。現行刑事裁判制度と検察・裁判の運用に誤判の原因が存することを証明するものである。司法の一翼を担うわれわれとして深い遺憾の意を表明せざるをえない。関係当局には猛省を促し、適切な誤判防止策を真摯に検討し、その結果を国民に明らかにすることを求めたい。
検察当局は、本日の判決を謙虚に受け止め、赤堀氏を冤罪の苦しみから解放するため、直ちに控訴の断念を表明し無罪判決の確定に協力すべきである。
島田事件弁護団に求められて昭和52年以来弁護人を派遣してきた当連合会は、あと百日ほどで還暦をむかえる赤堀氏に残された人生が、社会の理解をうけて真に充実したものとなるよう願う次第である。
われわれは、いまなお再審開始をめざして苦闘する諸事件への支援、誤判の温床となる代用監獄の廃止、接見交通権の確立および当連合会の提案による再審法の改正実現をめざして全力を傾けていく所存である。
1989年(平成元年)1月31日
日本弁護士連合会
会長 藤井英男