訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案について
本日、政府は「訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定した。
訪問販売に対する法規制の充実強化は、かねてより当連合会が求めてきたところであり、本改正法案がクーリングオフを現金取引にも適用するのを明確にしたことなどは、一定の前進であると評価できる。
しかし、消費者取消権などの被害救済制度を採用せず、行為規制の実効性確保が欠けているのみならず、かねてより批判の強い指定商品(役務・権利)制を維持し、登録制などの開業規則を採用しなかったことなど、現在の多発する訪問取引被害の救済と防止という観点からは、根本的な欠陥を有するものとなっている。
しかも、昭和63年1月29日に出された産業構造審議会答申から更に後退している。例えば、答申は、長時間にわたる執拗な勧誘や強引な勧誘を不当行為として禁止することを提言していたが、本改正法案は、これを注文上明確に禁止せず通産省令に委ねており、今後通産省令においてこれらが禁止されることになるかは懸念されるところである。
また、重要事項の不告知についても、禁止されるべきであるにもかかわらず、これを禁止行為として挙げていない。
このように、本改正法案の内容では、今日の深刻な訪問取引被害の実効ある予防と救済には極めて不十分であり、誠に遺憾といわざるを得ない。
今後、国会においては、被害の実態と現行訪問販売法の問題点が究明されるとともに、あるべき法規制のあり方について十分な審議が尽くされることを要望する。併せて、消費者被害の根絶と真に健全な訪問取引等の実現のため、かねてより当連合会の提唱している①開業規則と勧誘員登録制の採用、②指定商品(役務・権利)制の廃止、③業務規制特に勧誘行為規制の強化、④消費者被害救済制度の充実強化の4点を採用して早急に抜本的な法改正を実現するよう要望するものである。
1988年(昭和63年)3月11日
日本弁護士連合会
会長 北山六郎