改正訪問販売法の施行にあたって

昨日、改正訪問販売法が施行された。


同法は、豊田商事事件、霊感商法をはじめ、悪質な訪問取引やマルチまがい商法の被害が多発したことから、これらの被害を防止することを目的として、去る5月17日に公布され、この間政令、省令の制定作業が進められていたものである。


今次の改正において、訪問取引業者の開業規制が採用されず、適用対象の政令指定制を維持したこと、消費者解除権などの民事効果の導入を見送ったことなど、多々、不十分な点があることは否めないが、従来の訪問販売法に比して、法の適用の対象行為を拡大したこと、政令で16品目の役務・権利を新たな規制対象に指定し、指定商品も53品目に増やしたこと、法と省令で計9項目の禁止行為を明示し、行政監督権限を創設したことなどの点で改善が図られている。


今後は、今なお多発する被害を救済し防止するため、同法の運用の充実を図ることが重要である。とりわけ、新たに創設され、都道府県知事にも付与された行政監督権限が適切かつ有効に活用されることが望まれる。


訪問取引やマルチ商法の被害救済とその防止に取組んできた当連合会は、政府及び都道府県知事に対して、改正訪問販売法の積極的な運用を求めるとともに、さらに一層、被害救済とその防止及び消費者啓発に全国各地で努力を重ねる所存である。


1988年(昭和63年)11月17日


日本弁護士連合会
会長 藤井英男