布川事件再審請求棄却決定について

本日、水戸地方裁判所土浦支部は、請求人桜井昌司・杉山卓男両氏にかかる再審請求事件(いわゆる布川事件)について、これを棄却する決定をなしたが、甚だ遺憾である。


本件確定判決の証拠構造は、他の冤罪事件と共通した極めて脆弱なもので、請求人両名の自白と「請求人両名を犯行当日に布川近辺で見た」とする数名の目撃証言があるだけである。


請求人・弁護人らは、被害者の死亡推定時刻が原審の認定時刻と異なること、目撃証人が請求人らを見たとする日は犯行日と一致しないこと、請求人らの自白には多くの矛盾があること等を主張し、法医鑑定・目撃者の新証言等これを裏付ける新証拠を数多く提出するとともに、その事実の取調べと本件全体の解明のため公判未提出記録等の取寄・開示を強く要請していた。


しかしながら、裁判所は、弁護人の度重なる要請にも拘らず、法医鑑定につき鑑定人尋問の実施と未提出記録の一部を取寄・開示しただけで、その余については全く行なわず消極的態度に終始し、本日の決定に至った。このことは、到底審理不尽の謗りをまぬがれないと言わざるを得ない。


当連合会としては、今後、本件が上級裁判所において十分な審理が尽くされ、再審開始がなされるよう支援を続ける所存である。


1987年(昭和62年)3月31日


日本弁護士連合会
会長 北山六郎