江津事件再審請求特別抗告棄却にあたって

最高裁判所(第2小法廷)は、2月5日付で江津事件・後房市氏の再審請求について、特別抗告を棄却した。


この決定は、長い期間をかけた審理にしては、単に原決定の判断を妥当とするのみで実質的な理由を何ら示さず、まことに遺憾というほかない。


当連合会は、昭和52年1月以来、後氏の再審を支援してきた。本件は、凶器も特定されず、あやふやな間接証拠で無期懲役を宣告され、のちに犯行日とされる日の翌日以降も被害者が生存していたことを目撃した複数の証人が出現するなど、事実認定と自由心証のありかたの根本にかかわる事件であった。本件再審請求を頑に斥けた各裁判所の判断は証拠の明白性に関して営々と築かれた再審法理を旧に引き戻すものである。無実を叫び続けてきた後氏の憤りは察するに余りある。


当連合会は、今後も、冤罪者の救済と誤判の根絶をめざして、活動を続けていきたい。


1987年(昭和62年)2月6日


日本弁護士連合会
会長 北山六郎