島田事件再審開始決定について
1.
静岡地方裁判所は、本日、島田事件につき再審を開始する決定をした。この日の決定をめざして、長い年月苦難に耐えて無実を訴え続けた赤堀氏と、これを支えた弁護人の不屈の活動に敬意を表し、正しい決定を得たことを共に喜ぶものである。
2.
本日の決定は、3年前の東京高裁の差戻決定に従ってさらに調べを重ね、死刑判決が誤りであることを一層明らかにしており、ゆるぎない力をもつ。
高裁の決定は、6年の歳月をかけて検察側が新しく提出した証拠にも考慮を払い、とりわけ、自白の真実性を決すべき「石」に関する証拠(その後、検察側が撤回を申し出た)を重要な証拠として、差戻し理由に加えていたものであり、本日の決定に接して、右高裁の決定を想起せざるをえない。
3.
これまでの審理経過、内容からして、また、逮捕以来32年、今次再審申立から数えても17年という歳月が経過していることにかんがみ、本日の決定に対し、検察側が抗告を申し立てる実質的理由の存しないことはおのずから明らかであると考える。
検察官は、本日の決定を尊重し、すみやかに本件を公判手続に移行できるよう決断されることを期待する。
4.
死刑三事件が、再審無罪となって2年足らず、今また島田死刑再審事件の開始決定がなされたことの重みは大きい。
当連合会は、重大な誤判があいついで起っている原因の究明と防止策について、一層検討を進めるものであり、当面、懸案の刑事再審法の改正実現に向けて格段の努力を集中する所存である。
1986年(昭和61年)5月30日
日本弁護士連合会
会長 北山六郎