通産省産業構造審議会の現物まがい商法に関する答申について
このたび、通産省産業構造審議会において「いわゆる『現物まがい商法』による被害の再発防止策の在り方について」の答申がなされ、これをうけて近日中に法案が国会に上程されようとしている。
当連合会では、豊田商事等の実態からして、「現物まがい商法」については出資法を適用して、これを全面的に禁止すべきであり、今後同種被害を根絶するためには、必要な限度で出資法を一部改正し、合わせて早急に訪問販売法を抜本的に改正すべきであると考え、その旨を意見書にとりまとめ、右審議会等に申し入れてきた。
ところが、このたびの答申は「現物まがい商法」を営業として許容し、一定の事項を遵守しさえすれば、誰でもこれを行いうる内容となっており、なによりもまずこの点で日弁連の意見が入れられなかったことは、はなはだ遺憾といわざるを得ない。
しかも、海外先物規制法等の経験に鑑みるならば、右答申にうたわれた「規制」の内容程度では、この種の商法による被害の根絶はおよそ不可能と思われ、むしろ悪質業者を勢いつかせる結果になることが懸念される。
さらに、答申で規制の対象としている「事業者が、一般消費者を相手として商品等を一定期間預かることを約し、預かることに対応した利益を提供することを約する」取引は、信託業法により、本来「主務大臣の免許を受くるに非ざれば之を営むことを得」ない業種と競合する関係にありながら、答申はこの点への配慮が全くなされていない。
よって、当連合会は、右答申に基づく法案をこの段階で国会に上程することを見合わせ、大蔵省所轄の審議会において、出資法・信託業法等との整合性を検討するとともに、真に被害根絶のために各界の意見をとり入れさらに審議を尽されるよう要望する。
なお、当連合会は、この種詐欺商法を根絶し、国民の生存権・財産権が保障されるために全力を尽す所存である。
1986年(昭和61年)3月13日
日本弁護士連合会
会長 石井成一