徳島事件無罪判決確定にあたって
本日、検察庁が控訴断念を発表したことにより、徳島事件の無罪判決が確定した。
冨士茂子さんはこの日を待たず他界されたが、同人の不屈の闘志と、請求人となって故人の遺志を継いできた方々をはじめとする多くの支援が見事に結実し、この日を迎え得たことを心から喜ぶ次第である。
日弁連が第1号再審事件として取り組んだ徳島事件は、わが国裁判史上初めての死後再審事件であり、刑事司法の在り方に深刻な教訓を残している。関係当局は、捜査の在り方を猛省するとともに、現在も誤判の原因となっている自白偏重の捜査と誤判を厳しく反省し、速やかに再審法の不備を是正するなど、再びこのような事態を繰返さないことを国民の前に明らかにすべきである。
日弁連は、他の冤罪事件が1日も早く救済されるようさらに力を尽すとともに、真に人権を尊重する司法の実現に向けて今後とも努力を続ける所存である。
1985年(昭和60年)7月19日
日本弁護士連合会
会長 石井成一