刑法問題意見交換会一時休会にあたって
1.
昭和56年7月25日に始まった刑法問題意見交換会は23回におよぶ意見の交換を経て、法務省より、成案作成にむけ現在検討中の事項について、その内容の説明が現段階においては具体的に呈示できないので、当面一時休会したいとの申し入れがあり、日弁連はこれを認めることにした。
日弁連は、この意見交換会が刑法「改正」問題に対する論議の対立点、一致点を国民の前に明らかにする上で大きな役割を果たしてきたことを高く評価する。
しかしながら、日弁連からの再三の要望にもかかわらず、法務省が検討中の事項について、積極的に意見交換会の素材としなかったため、現時点においては遺憾ながら論議をつくしたとは言いがたいと考える。
2.
また、刑法「改正」問題の重要な論点となっている精神障害と犯罪をめぐる問題については、もともと日弁連と法務省の間の意見交換だけでは論点を真に深めることは出来ないのであり、両者とも、この点に関する精神医療関係者も含めた冷静な論議が実現するよう努力すべきものと考える。
3.
刑法問題意見交換会は、今後法務省の検討結果が明らかになった場合、あるいは状況によりどちらかが求めた場合には再開されることとなっているが、さらに論議を深めるべき事項が数多く残されているのであって、日弁連は再開後の意見交換会が実り多いものとなることを切に望む。
4.
日弁連は、これを機に、刑法全面「改正」問題に関する国民的論議がいっそう発展することを期待するものである。
1984年(昭和59年)6月8日
日本弁護士連合会
会長 石井成一