勾留中の被告人の処遇に関する事案について

本日、最高裁大法廷で判決言渡のあった勾留中の被告人の処遇に関する事案については、日弁連は事実を調査したうえ、昭和47年5月4日、「拘禁目的に差し迫った明白な危険がないかぎり、新聞閲読の自由を最大限に保障するよう」関係各方面に強く警告している。


もともと未決拘禁者は、逃亡と罪証隠滅の防止のために、止むをえず身柄を拘束されているものであって、この目的を超えて人権を制限するようなことは、許してはならないのが原則である。


しかし、従来わが国では、監獄内の規律秩序を維持するためとして、本件事案で問題とされた新聞記事塗りつぶしの例のように、とかく恣意的に不当に未決拘禁者の自由を制限してきたのであり、国会へ提案されている刑事施設法案も、規律秩序の維持に偏って人権を軽視する傾向をもっている。


日弁連は、拘禁二法案反対運動でも、つとにこの点を指摘し、とくに防御権行使の観点から、未決拘禁者の知る権利を保障することが必要であると主張している。今回の最高裁判決は、未決拘禁者の権利を制限できる場合の基準を若干具体的にした点では、従来より前進したものと評価できるが、現場での恣意的運用の歯止めとしては、まだ十分ではない。


日弁連は、拘禁二法対策運動を通じて、国民の正当な人権を擁護する活動に努力を傾ける所存である。


1983年(昭和58年)6月22日


日本弁護士連合会
会長 山本忠義