徳島事件即時抗告棄却決定について

本日、高松高等裁判所は、冨士茂子さんに対する再審開始決定に異議をとなえた検察官の即時抗告を棄却する決定を下しました。


冨士さんは、30年前、不当に強制された2少年の虚偽の証言により殺人事件の犯人とされ、長きに亘り名誉と自由を奪われてきました。この誤った裁判への6度目の再審請求に対し、徳島地方裁判所は昭和55年12月再審決定を下しましたが、残念なことにその直前、冨士さんは亡くなられ、その遺志は遺族の方々に継がれてきたのでした。


さきの再審開始決定に際し、私たちは検察官に対し、建前にとらわれ、無意味な上訴をすることのないよう強く要望しましたが、不当にも即時抗告がなされ、2年余の時間が空しく流れたのです。しかし、本日の棄却決定により、再審公判への道は再び大きく開かれました。


人権擁護委員会に事件委員会を設け、「無辜の救済」に長年とりくんできた日本弁護士連合会としては、遅すぎたとはいえ、今日のこの決定の意義を高く評価するとともに、冨士さん、御遺族の不屈の努力に敬意を表するとともに冨士さんの無実を信じて、長い間支援を続けてこられた全国の多くの方々に深く感謝の意を表わすものです。


松山事件についても、検察官は特別抗告を断念しましたが、本事件についても特別抗告をするなというのは、私たちだけでなく、全国民の声であると考えます。検察官には特別抗告をすることなく速やかに再審公判に臨まれるよう要請すると同時に、今後の再審公判で、冨士さんの無罪が1日も早く確定するよう、日本弁護士連合会は、今後も最大限の努力を尽すことを誓うものであります。


1983年(昭和58年)3月12日


日本弁護士連合会
会長 山本忠義