東京都新宿区・佐賀県武雄市での事件について

7月4日、東京都新宿区と佐賀県武雄市で発生した2つの事件について、被害者の方々に心から哀悼の意を表し、お見舞申し上げるとともに、このような悲劇がくり返されることのないよう強く念じるものである。


これらの事件の原因とそれに至る経過は、まだ十分に明らかにされてはいないが、いずれも、加害者は精神障害の病歴と治療歴をもっていると伝えられている。


いずれの事件も、その経歴をみると保安処分の新設などで防止しえなかったことは明白であり、精神医療の改善こそ早急に必要であることをはっきり示している。


とくに、日弁連が「精神医療の改善方策について」の意見書で提案し、「野田報告書」でも提起されている精神科医療の救急体制確立の課題は、最大の急務であり、日弁連としては、その重要性を6月12日の刑法問題意見交換会でも強調したばかりであった。そのためには、当然、人的体制の面でも、物的体制の面でも、これを整備していく施策が不可欠である。


この問題は、覚せい剤の慢性中毒者に対する専門的な医療体制の確立とならんで、当面の緊急課題であり、その実現をはかっていくために、関係各機関の格段の努力を望むものである。


1982年(昭和57年)7月12日


日本弁護士連合会
会長 山本忠義