第4回刑法問題意見交換会について

本日の第4回刑法問題意見交換会で、日弁連側は、従前の討議経過に基づいて、「草案にはこだわらないが刑法全面改正の必要がある」と主張している法務省側に対し、その基本的な方向と具体的内容を速やかに国民の前に提示すべきであることを指摘した。


法務省側は、これにこたえて、「刑法改正作業の当面の方針」および「保安処分制度(刑事局案)の骨子」を提示し、あわせて、政府案を来年3月の通常国会に提出する予定であると説明した。


この「当面の方針」は、草案の実質的内容のうち、現行刑法をこえる重罰化を全面的に削る(3項(注)1・2・3、4項(注)1・2)など、一定の限度で、意見交換会をはじめとする日弁連の意見を受け入れたこと、今後も日弁連側の意見を十分に聴いていく姿勢を示していることの2点で評価することができる。


しかし、賛否の対立が著しく、日弁連が重大な問題であると強く批判してきた公務員機密漏示罪・企業秘密漏示罪など、検討中の課題として残されているものが余りにも多い(3項(注)5)。


 これらの点については、今後さらに意見交換会などを通じて日弁連の批判意見を述べていくことの重要性がますます大きなものになってきているし、国民的論議をいっそう発展させていくことがますます不可欠のものとなっている。


そのことによって、新設処罰規定等による処罰範囲の拡大という、草案のもう一つの実質的内容を全面的に撤回させていくことができるのである。


「保安処分制度の骨子」についても、日弁連は、精神医療優先の基本に立脚しつつ、改めて会内討議を早急に進める予定であるが、まだ不明確な点も多すぎるといわなければならない。


いずれにせよ、現在進行中の刑法全面「改正」問題については、以上の諸点に関する国民各層の論議を十分に尽すことが絶対に必要であり、このことを無視して来年3月の政府案国会提出を強行することは許されないものというべきである。


1981年(昭和56年)12月26日


日本弁護士連合会
会長 宮田光秀