財田川事件再審開始決定についての談話

昭和25年2月、香川県財田村において発生した強盗殺人事件の死刑確定事件について、本日、高松地方裁判所は請求人谷口繁義の請求を容れて再審開始を決定した。


1.

「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判における鉄則が再審における証拠判断でも適用されることを宣明した最高裁白鳥決定(昭和50年5月20日最高裁第1小)の判旨とこれをさらに敷衍した本件の最高裁特別抗告審での差戻決定(昭和51年10月2日最高裁第1小)の判旨、すなわち、再審開始のためには、確定判決の事実認定に合理的疑いを生ぜしめれば足りるとした判旨が、本日、死刑再審事件において、開始決定となって実を結んだことを心から喜ぶものである。


2.

死刑確定という事実と対面しながら、長きにわたって無実を訴えつづけ、たたかって来た請求人本人とこれを支えてきた弁護人諸氏の活動にあらためて敬意と謝意を表するものである。


3.

日弁連は、発足以来、冤罪に苦しむ人々のため、再審には、ことさら力を割き、具体的事件における救済と共に立法・運用の両面での改善を提言してきた。本日の開始決定にあたって日弁連は、特に次の諸点を強く要請したい。


  1. 検察官は本日の開始決定を尊重し、速やかに本件を再審公判に移行させて、雪冤の早期実現を期すべきである。
  2. 本件を教訓として再審の理由を拡大緩和し、請求人の手続保障の充実を期する再審法の改正を急ぐべきである。

4.

日弁連は更に全国会員が力を合せて、右諸点の実現に向い引き続き努力を重ねていくことを誓うものである。


1979年(昭和54年)6月7日


日本弁護士連合会
会長 江尻平八郎