いわゆる「弁護人抜き裁判」特例法に関する三者協議成立についての談話

一昨年の末に、いわゆる「弁護人抜き裁判」特例法案が提案されて以来、日本弁護士連合会は、このような立法はわが国裁判制度の将来に禍痕を残すものであり、国民の人権保障の観点から絶対に阻止しなければならないという基本方針に立って、今日までその阻止の運動を進めて来た。


その中で、日弁連は、問題とされた一部の刑事裁判における異常な事態の解消について裁判所・法務省側にも善処を求めるとともに、弁護士会においても、弁護人の側の誤りによる弁護人不在の法廷を今後現出させないという決意を新たにし、そのための具体的方策を自主的に明らかにした。


「弁護人抜き裁判」特例法案は、本来決して望ましいものではなく、むしろこのような問題は、法曹三者の努力によって解決されるべきものである。


日弁連は、このような信念に基づいて、今日まで、最高裁・法務省とともに、法曹三者による当面の問題の解決のための合意を求めて鋭意努力してきた。今日、この三者の良識と誠意に基づく協議が結実したことは、司法の将来にとってまことに喜ばしいことであると考える。


日弁連は、今後、この協議の中で日弁連が示した諸方策を早急に実現するための手続を進める所存であるが、今日、この協議の成立によって、「弁護人抜き裁判」特例法の必要性は、ますますなくなったと確信する。


国会においても、この三者の協議の結果を高く評価されることを期待し、切望するとともに、これまでの関係者のご努力とご支援いただいた方々の温いご理解に対し心から感謝しつつ、今後一層のご支援をお願いするものである。


1979年(昭和54年)3月30日


日本弁護士連合会
会長 北尻得五郎