免田事件再審開始決定に対し特別抗告をしたことに対する談話

免田事件に関する福岡高等裁判所の再審開始決定に対し、検察官が特別抗告の申立をしたことはまことに遺憾である。


本件再審開始決定は、判決確定後28年もの長い間死刑囚として雪冤の日を待ちつつ、獄中生活を強いられてきた免田被告に対し、その無実を明らかにすべき審理への扉を開いたものであり、しかもそれは、検察側の十分な立証活動の結果をふまえた上で、免田被告には無実を言渡すべき新規明白な証拠があるとしてなされたものであった。


したがって、検察官としても、公益の代表者たる地位を自覚する限り、右高等裁判所の開始決定に服した上で、再審開始後の審理においてその立証活動を尽すのが当然の責務であり、審理の開始自体に異をとなえることは、却って検察の威信を傷つけるものと言うほかない。


われわれは、検察官が国民世論に謙虚に耳を傾け、右抗告を1日も早く撤回されて、真実の発見に協力することを強く要望するものである。


1979年(昭和54年)10月2日


日本弁護士連合会
会長 江尻平八郎