伊江島における米兵狙撃事件について

日米合同委員会合意書協定第17条3項aの=(公務執行中の作為、不作為から生ずる罪)にいう公務とは、法令、規則、士官の命令又は軍慣によって要求され、又は権限づけられるすべての任務若しくは役務を指すと規定しているが、無防備の住民に対して信号砲で至近距離から狙撃するといった非人道的な行為がいかなる意味においても、右の「公務執行中」の行為に該当しないことは、これまでの実例に徴してもあまりにも明白であり、昭和27年12月30日、第34回合同委員会における武器の使用に関する日米間の合意事項を改めて持ちだすまでもない。


この点につき、那覇地方検察庁検事正、県警本部長も、24日から26日の日弁連、東弁、二弁、沖弁の合同調査団に対して、本件が「公務外」であることを言明しており、第一次裁判権をわが国が有することを前提として、逮捕状の交付をうけて米軍当局に対し、被疑者の身柄引渡を要求しているとのことであった。


これまで米軍当局は、被疑者の行為が、「公務外」であると認め、2名の犯罪通知を去る7月19日検事正宛に行ない、その際バホー憲兵隊長は当然のことながら「公務中の犯罪証明書は発行しない」旨明らかにしていた。ところがこのたび、態度を一変させて、被疑者らの行為が「公務中」である旨検事正に対して通知してきたとのことであるが、このような米軍の非常識な判断と態度の変更は、前記合同調査団に対する面会、現場立入り等の拒否、トラクターによる現場の著しい変更及び捜査当局に対する一貫した身柄引渡拒否の態度と合わせて、絶対許すことはできない。


わが検察当局の毅然たる姿勢を期待するとともに、米軍当局に対しては、これを厳しく弾劾する。


1974年(昭和49年)7月29日


日本弁護士連合会
会長 堂野達也