13期裁判官の再任拒否問題に関する談話

新聞の報道によると、最高裁判所は10年間の任期を終える13期裁判官の熊本地方・家庭裁判所宮本康昭判事補を再任しないことに決め、更に、23期司法修習生で裁判官希望者のうち7名を採用しないことに決めた。そして、その理由は公表されていない。


この宮本判事補と任官拒否された7名のうち6名は、青年法律家協会の会員であり、又、1名は、同会の同調者とのことであり、再任と任官の拒否は、青法協の会員であることが理由とされた疑いが強い。


そうだとすると、裁判官の思想・信条・団体加入を理由に再任と任官を拒否したものであり、該当者の基本的人権を侵すばかりか、裁判官の身分保障ひいては司法権の独立をおびやかすことになり、重大問題であると言わなければならない。


日本弁護士連合会は、去る1月27日、13期裁判官再任、23期司法修習生の任官採用にあたり、最高裁判所は思想・信条や団体加入によって差別することがないよう毅然たる態度を持して欲しいとの要望書を最高裁判所長官に提出し、この点に関して、最高裁判所は国会において、青法協会員であることを理由に再任及び任官を拒否しないと答弁している。しかるに、前記の事実は、前記要望を無視して右国会の答弁に反することになる。


最高裁判所は、本人の希望に従がい、再任及び任官拒否の理由をすみやかに公表し、国民の疑惑にこたえるべきである。


1971年(昭和46年)4月3日


日本弁護士合会
会長 渡部 喜十郎


昭46・7・17理事会事後承認